文句なしの連勝スタート、敵地での豪州戦でも強さを見せられるか!?


ツイート
文句なしの連勝で好スタートを切った日本
photo:山口剛生

◆戸塚啓の日本代表コラム〜Road to Brazill〜

ここまでは、非の打ちどころがない。最終予選は文句なしの連勝スタートとなった。

オマーンもヨルダンも、過去の対戦に比べるとひ弱な印象は拭えなかった。とりわけ、2004年と2011年のアジアカップで苦戦を強いられたヨルダンは、スケールダウンが著しかった。

試合後のアドナン・ハマド監督は、「シーズン終了後で選手が疲れていた。10人になったのも影響した」と何度も繰り返したが、退場者が出た時点で日本はすでに2点のリードを奪っていた。敗戦の主因となったのは、彼らのメンタリティーだっただろう。リードを奪われると精神的にキレてしまうのは、中東諸国に共通する弱みである。

中東からやってきた2チームの出来が低調だったとはいえ、舞台は最終予選である。アウトサイダーはいないし、彼らが負けるつもりで戦っていたはずもない。その中で、圧倒的な強さを誇示したのである。機先を制して一気に流れを掌握した日本の戦いぶりは、やはり称賛されるべきだ。

アルベルト・ザッケローニ監督が率いるようになってから、快勝や大勝はいくつかある。昨年のアジアカップではサウジアラビアを5-0で退け、同8月には韓国を3-0で粉砕した。ただ、サウジアラビアはグループリーグ敗退が決まっており、韓国戦はテストマッチ。割り引かなければならない要素があったのは事実である。

アジアで圧倒的な強さを見せつけたチームといえば、2000年のアジアカップが思い浮かぶ。初戦でサウジアラビアを4-1で一蹴し、第2戦ではウズベキスタンを8-1と粉砕。決勝戦までの全6試合で21得点を叩き出したこのチームは、アジアカップ史上最強と言われている。日本サッカーの歴史においても、上位にランクインされるのは間違いないだろう。少なくとも過去10年ほどのスパンにおいて、あれほど魅力的で強さを見せつけたチームは見当たらない。

しかし、ザッケローニ率いる現在の代表は、あの伝説的なチームを上回る予感を抱かせる。2試合で評価を下すのは時期尚早だとしても、継続的にトレーニングを積めば確実に完成度を高められることを、彼らはこの2試合で証明した。

選手層も確実に厚くなっている。酒井宏樹の台頭が内田篤人を刺激し、宮市亮の登場が2列目の選択肢をさらに多彩にしている。遠藤保仁と長谷部誠が長く牽引してきたダブルボランチでは、細貝萌がここにきて頭角を表わしてきた。スタメンで唯一流動的だった1トップも、2戦連発の前田遼一が定位置を固めつつある。

誤算があったとすれば、吉田麻也の負傷だろう。ヨルダン戦で右ひざを痛めたこのセンターバックは、オーストラリアへ行くことなくチームを離れてしまった。ヨルダン戦の交代枠を彼の負傷で使うことになったのは、オーストラリア戦の選手交代に微妙な影を落とすかもしれない。

スタメンの選手たちが試合勘を磨いている一方で、多くのサブメンバーはゲームから遠ざかっている。オマーン戦で酒井、清武弘嗣、細貝、ヨルダン戦では栗原勇蔵、中村憲剛、伊野波雅彦が途中出場したが、たとえば宮市はアゼルバイジャン戦を最後にピッチに立っていない。

オーストラリア戦は日本にとってのアウェーゲームで、ベタ引きの相手を攻略してきた過去2試合とは異なる構図が描かれる。簡単に言えば、敵陣にスペースを見つけやすいのだ。そうなれば宮市のスピードを生かせる期待は高まるが、2週間以上もゲームをこなしていない彼を投入するのは、少しばかりリスクが伴う。

また、オマーンとヨルダンから奪った合計9つのゴールは、オーストラリアにとって貴重な教材となる。そもそも互いを知るチーム同士とはいえ、最新の情報をより多く提供しているのは日本だ。単純に消化試合数がひとつ多いだけでなく、ワンサイドゲームが続いただけに、攻撃の特徴を明かしてしまった。香川真司と長友佑都に本田圭佑が絡む左サイドからの崩し、遠藤の決定的なラストパスは、オーストラリアも十分に警戒してくるだろう。

ただ、オマーンから帰国する相手より、日本は移動距離が短い。気候の変化もなく、時差も少ない。そうした条件を、どこまで生かすことができるか。何よりも、過去2試合より明らかにレベルの高い相手守備陣を、崩しきることができるのか。

いかにアウェーだとしても、アジアレベルで守備重視の試合運びはふさわしくない。求められるのは志の高いゲームであり、このチームがどれほどの可能性を秘めているのかが、そこから見えてくる。

【プロフィール】
戸塚啓(とつか・けい)
1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の国際Aマッチは91年から取材を続けている。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。最新著書に『不動の絆』〜ベガルタ仙台と手倉森監督の思い(角川書店)。『戸塚啓のトツカ系サッカー』ライブドアより月500円で配信中!

2012.06.11 14:32


ニュース一覧
コメントニュース一覧
SOCCER KING + TOP