戸塚啓の日本代表コラム〜Road to Brazill〜
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■ファーストチョイスは前田か…日本代表の攻撃の鍵を握る1トップ
香川真司の先制弾と本田圭佑の頼もしい復帰、さらには宮市亮の国際Aマッチデビューと、5月24日のキリンチャレンジカップは日本代表にとってポジティブな印象を残した。翌25日に発表されたワールドカップ最終予選のメンバーには、アゼルバイジャン戦に参加しなかった今野泰幸、吉田麻也、遠藤保仁、ハーフナー・マイク、清武弘嗣らが加わっている。
6月3日に行われるブラジル・ワールドカップアジア最終予選の初戦であるオマーン戦には、いつもの4-2-3-1が並ぶだろう。ただ、悩みどころがひとつだけある。1トップは誰なのか、だ。
3次予選でも、3人の選手が先発で起用されている1トップ。ハーフナーが3試合、李忠成が2試合、前田遼一が1試合に出場したが、いずれもレギュラーポジションを獲得するまでには至らなかった。
1トップによる得点は「3」で、ハーフナーが2点、前田が1点を記録しているが、いずれもグループリーグ最弱のタジキスタン相手に記録したもの。ホームで敗戦を喫した今年2月のウズベキスタン戦では、ハーフナーが先発で出場し、李忠成が残り25分で投入されたが、どちらも存在感をアピールできなかった。
先日のアゼルバイジャン戦では、2010年10月のアルゼンチン戦以来となる森本貴幸が1トップで起用された。アルベルト・ザッケローニ監督の初陣で1トップに指名された彼は、指揮官がかねてから期待を寄せてきた存在である。ところが、1年8カ月ぶりの復帰戦は前半途中で腰を痛めてしまい、37分までのプレーとなってしまった。「オマーン戦には間に合う」(ザック)との判断から最終予選のメンバーには名を連ねているが、回復具合を見極めていく必要があるだろう。
李忠成が戦線離脱しているため、最終予選ではハーフナー、前田、森本の3人が1トップの候補になる。3次予選の流れを汲めば、ハーフナーが有力候補に上がってくるが、昨年9月に代表デヒューを飾った彼は、トップ下に入るであろう本田とプレーしたことがない。
4-2-3-1のトップ下と1トップに、密接な関係が求められるのは言うまでもない。公式戦では慎重な采配をするザックが、彼ら2人をいきなり同時起用するとは考えにくい。
そう考えると、ここでクローズアップされるのが前田だ。周囲を生かし、自らも生きる彼は、評論家はもちろん、チームメートからの評価も高い。昨年1月に行われたアジアカップでは、本田とともにプレーをしている。
ザックのチームには、2列目に豊富なタレントが揃う。今回のメンバーなら本田、香川、岡崎慎司、清武、宮市で、中村憲剛もトップ下で高水準のプレーを見せる。彼らがポテンシャルを発揮することで、勝利が近づいてくるのは間違いない。
1トップがしっかりとボールをキープすることは、2列目が輝く大前提である。両サイドバックの攻撃参加も、前線に起点がなければ実現しない。マッチアップするDFの圧力を受けても、ズルズルと下がらない。身体を張ってキープし、攻撃の起点となる。背後へ逃げたりサイドへ流れたりするのではなく、ペナルティーエリアの幅で攻撃に奥行きを出す前田が、現時点ではベターなチョイスと言えそうだ。
3次予選の6試合では、少なくとも2人のFWが起用されてきた。交代のカードとして考えると、前田ではなく高さのあるハーフナーのほうが相手は嫌がるだろう。一発を秘めた森本も、前田に比べればジョーカーの資質は強い。
4-2-3-1でも3-4-3でも、最前線は攻撃の軸である。ローテーションで乗り切ることはできるとしても、確固たる存在の登場が待たれる。アゼルバイジャン戦で本田が見せた重量感が、何よりも最前線に欲しいところだ。
photo:足立雅史
鍵を握る1トップのファーストチョイスは前田か
【プロフィール】
戸塚啓(とつか・けい)
1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の国際Aマッチは91年から取材を続けている。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。最新著書に『不動の絆』〜ベガルタ仙台と手倉森監督の思い(角川書店)。『戸塚啓のトツカ系サッカー』ライブドアより月500円で配信中!
2012.06.01 19:19
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