再び軌道に乗った09年の優勝クラブ

 もう一つの注目クラブ、ヴォルフスブルクは、もともと年間予算でバイエルン、ドルトムントに次ぐ規模を誇る。だが、フェリックス・マガト監督の下でリーグ優勝した2008-09シーズンを除けば、この10年の平均順位は10位と、まるで中堅クラブだ。移籍市場では新しい選手を買いあさり、それでも一向にチームの基盤ができない。むしろ、補強をすればするほど混乱する悪循環に陥っていた。

 このクラブの不振の元凶は明確だった。09年の優勝監督、マガトを10-11シーズン途中から復帰させた上に、彼に補強の全権を与えたことによる弊害である。

 監督とSDを一人で背負ったマガトは好き放題にチームを改造し、気に入らない選手(例えばシモン・ケアや長谷部誠)を理由も明確にせずチームから外した。長谷部のように有能な選手を使わず、二流選手を買いあさってはピッチに上げ、その代償が2部陥落の危機だったのだから、まるで笑えないジョークだ。

 昨シーズン途中でマガトが解任され、クラブにはようやく平和が戻った。ここで重要なのは後任人事を間違わないことだが、ハノーファーとニュルンベルクで一定の成績を収めていたディーター・ヘッキンクを監督に招き、新たなSDにはブレーメンで抜群の交渉術を見せていたクラウス・アロフスに白羽の矢を立てた。これはクラブ首脳陣のビッグプレーだった。

 私が指摘したいのは、ヘッキンクが後半戦から指揮を執り、その3カ月後にようやくチームらしくなってきた終盤の10試合、ヴォルフスブルクが一度も負けなかったという事実だ。今夏のキャンプでもチームは順調な仕上がりを見せ、新加入のスイス代表DFティム・クローゼ、MFダニエル・カリジュリを加えた新チームは今まで以上に強固な守備を見せている。

 そして、何よりも重要なのは司令塔ジエゴをキープできたことだろう。ジエゴを中心にして、機動力のあるヴィエイリーニャ、イヴァン・ペリシッチ、イビツァ・オリッチが周囲を動き回る攻撃も成熟してきた。ヘッキンクが浸透させた攻守分業型のスタイルを継続すれば、安定した戦いができそうだ。



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