街全体がサポートキーワードは一体感

 さて、ここからは今シーズンの昇格組3チームを見てみよう。まずは2部優勝を果たして、51年ぶりにトップリーグ昇格を果たしたカーディフだ。彼らは2010年、マレーシアの実業家ヴィンセント・タンに買収されて以降、着実に力をつけてきた。過去3シーズンはいずれも昇格プレーオフに進出しながら涙を飲んできたが、裏を返せばそれだけ2部上位の常連だったということ。安定感は昇格3チームの中で一番だ。

 また、過去にウィガンやハル、同じウェールズのスウォンジーがそうだったように、プレミアリーグ昇格は街全体を活気づかせる効果もある。ウェールズの首都では、今回の昇格によって新たに5000人の雇用が生まれ、1億2000万ポンド(約180億円)もの経済効果を生むという試算もある。街全体のサポートを受け、強敵たちに立ち向かえるというメリットも見込めそうだ。

 ただし昨シーズン、オーナーのタンが伝統のクラブカラーを青から赤に変更したことで、スタジアムには《かつての青》と《新たな赤》のユニフォームが混在するという奇妙な現象も生まれている。カラーチェンジの理由が「強豪クラブと言えば赤」というオーナーの独断と偏見によるものだったことから、ファンの中にはこの件を快く思っていない者も確実に存在する。結果が出ているうちはいいが、降格の危機に立たされた時、クラブが一体になれるかどうかにはやや疑問符が付く。このあたりが主たる不安要素だろう。

 2部2位のハルは、昨シーズンの昇格レースの中ではダークホース的存在だったが、スティーヴ・ブルース監督の指導により躍進を遂げ、自動昇格を勝ち取った。かつてマンチェスター・ユナイテッドでセンターバックを務めた《闘将》が率いるチームのキーワードは「ガッツ」。指揮官いわく、「うちには優秀なタレントはいないかもしれないが、選手たちは一丸となり、大きな熱意を持っている」。昨シーズンはケガ人の続出に伴うストライカー不足に悩まされながらも、持ち前の堅守をベースに2位を死守した。ハルと言えば、プレミア初昇格にしてアウェーでアーセナルやトッテナムを破る大金星を挙げた08-09シーズンが思い出される。フィル・ブラウン監督が率いた当時のチームは大胆でアグレッシブな攻撃志向のチームだったが、ブルースは真逆の守備的なアプローチで残留を狙う。



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