マルティーノ就任は 間違った選択ではない

 では、マルティーノはバル サの指揮官として適任なの か。間違った選択ではない、 というのが私の見解だ。

 マルティーノは現役時代、ニューウェルスでMFとして プレーし、ここでビエルサと 師弟関係を築いた。そのた め、指導者への転身後もビエ ルサに近いハイプレスとポゼ ッションを重視した攻撃的な サッカーを志向する傾向があ る。2012年に古巣ニュー ウェルスの監督に就任し、長 年低迷するチームを国内リー グ優勝にまで導いた手腕も見 事だが、個人的に強い印象を 受けたのは07 年から2011年までのパラグアイ代表監督 時代だ。

 パラグアイは本来、堅守速 攻を伝統とするチームであ る。強固な守備陣が相手の侵 入をとにかくブロックし続 け、攻撃はカウンター一辺倒。1点を奪って守り抜けれ ば御の字で、スコアレスでの PK戦突入も辞さない、とい う極めて守備的なスタイルだ った。しかし、マルティーノ 就任以降はその状況が一変し た。闇雲なロングボールは蹴 らず、最終ラインから丁寧に ビルドアップし、相手ボール 時にはFW陣がハイプレスを 掛け、奪ったボールを素早く シンプルにつなぎながらゴ ールへと迫る。高い守備力は そのままに、攻撃的スタイル への見事な変貌を遂げたの だ。特に南アフリカ・ワール ドカップの南米予選は圧巻だ った。アウェーゲームでは若 干のもろさを見せたが、ホー ムでブラジル、アルゼンチン から白星を挙げ、堂々の3位 で本大会への出場権を手にし た。あのパラグアイが、こん なにも攻撃的で魅力的なプレ ーをするのか││そう思うほ どの衝撃であり、そのチーム を作り上げたのが他でもない マルティーノだったのだ。

 最終ラインからのビルドア ップやハイプレス、素早いパ ス回しといったキーワード は、まさにバルサのスタイル そのものを表すものだ。 「今 までどおり4│3│3の布陣を採用する。ニューウェルス やパラグアイ代表でもやって きたスタイルで、最もやり やすい」という就任記者会見でのマルティーノの言葉どお り、バルサ側、マルティーノ 側いずれも大きな変更を強い られることなくスムーズにチ ーム作りを行えるという点で は、マルティーノは適任者だ と言えるだろう。



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