懸念はメッシの存在 依存症は解消できるか

 懸念すべき点があるとすれ ば、昨シーズンも顕著だった 《メッシ依存症》についてだ。 メッシ、マルティーノともに ロサリオ出身、ニューウェル ス出身であることは既に周知 のとおりだと思うが、就任決 定についてマルティーノ本人 が「メッシ親子からクラブへ の進言があったのではない か」とコメントしたことは、 指揮官の中に「メッシは監督 人事にまで影響力を持つほど の《特別な存在》なのだ」と いう認識が少なからずあるこ とを意味している。その後の 会見で「それは事実ではなか った」と否定したが、ネイマ ール獲得時にもクラブ側がそ の是非についてメッシに《お 伺い》を立てたという報道が あるだけに、本当にそうだろ うか、という疑念も浮かぶ。 新戦力や新監督を決めるの に、首脳陣がキャプテンでも ない一選手にいちいち相談す る。果たしてそれが健全な状 態と言えるだろうか。たとえ事実ではないとしても、その ような報道が出ること自体、 メッシへの依存度が今まで以 上に高いことを意味している のではないだろうか。

 同胞であり、クラブの後輩 でもあるメッシに対し、マル ティーノはこれまでの指揮官 と同様、全幅の信頼を寄せる だろう。ただ、関係はあくま で監督と選手。そのパワーバ ランスが崩れてはいけない。 指揮官がメッシの顔色をうか がい、気を遣いながら指導を 行うようでは、チーム内の秩 序はやがて崩壊するだろう。

 マルティーノ監督の初采配 となったジョアン・ガンペー ル杯では、サントスを相手に 8│0で圧勝。これ以上ない船出となったが、今シーズン は困難な1年になることは間 違いない。メッシを筆頭に、 世界屈指の選手を擁している とはいえ、ヨーロッパ初采配 の指揮官が、リーガ連覇とチ ャンピオンズリーグの王座奪 回を果たすことは簡単なミッ ションではない。

 ただし、今回の指揮官交代 はマンネリ感が漂っていたチ ームを変える好機という見方 もできる。選手との対話を重 視し、その特徴を生かす手腕 に長けると言われるマルティ ーノ監督が、どんな変化をも たらすのか。 《タタ・バルサ》 の今後に注目したい。



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