大幅に後れを取るイングランドの育成

 一方、資金力で劣るフランスやオランダのクラブは育成に力を入れている。必然的に自国の若手選手が早いうちから1部での戦いを経験できる。例えば、U-21オランダ代表はアヤックスやPSV、フェイエノールトといった強豪クラブの主力がチームの大半を占め、そのうちの多くがフル代表の常連だった。これに対して、U-21イングランド代表で在籍クラブの主力を担っていたのはサウサンプトンのナサニエル・クラインくらい。主将のジョーダン・ヘンダーソンや背番号10を背負ったジョンジョ・シェルヴィーですらリヴァプールでは控えに甘んじている。

 また、スペインやドイツではトップクラブの《Bチーム》が下部リーグに参戦している。リザーブリーグで同年代と、観客のいない競技場で試合をするより、下部リーグで真剣勝負を経験したほうが成長のスピードが速いことは明らかだ。レアル・マドリーやバルセロナのBチームで揉まれたスペインの若手は、プレミアのビッグクラブでくすぶっている選手より経験が養われている。

 実は現マンチェスター・ユナイテッド監督のデイヴィッド・モイーズが、エヴァートン時代にリザーブチームの5部リーグ参入を要請したことがあった。しかし、FAの返答は「ノー」だった。

 イングランドの育成事情が、他の欧州強豪国に比べて大幅に遅れているのは間違いない。こうした現状を打破するために、リーグとFAは3億2000万ポンド(約480億円)の予算を投じて『エリート・プレーヤー・パフォーマンス・プラン』をスタートさせた。アカデミーの環境改善と水準強化、指導者の数と質の底上げ、アカデミーとトップチームのギャップを埋めるU-21プレミアリーグの創設を含むこの取り組みは、国を上げた強化の切り札となっている。もっとも、補強が利くクラブと違って代表の強化は一朝一夕で成し遂げられるものではない。アンダー世代に春が訪れるのは、まだかなり先になりそうだ。


ENGLAND HOT TOPIC

元代表のガスコイン氏がまたも飲酒トラブルで逮捕

元イングランド代表MFのポール・ガスコイン氏が7月4日、酒に酔って警備員および元妻に暴行を加えたとして逮捕された。留置所で一晩を過ごした後、不起訴のまま釈放されたが、その4日後にも泥酔して気絶するという騒動を起こした。ポケットからはジンのボトルが2本発見されたという。アルコール関連のトラブルを数多く引き起こしてきたガスコイン氏は、今年2月にアルコール依存症の治療のためアメリカへ渡り、リハビリ施設に入院。約1カ月の治療を終えて帰国していたが、効果はなかったようだ。



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