バイエルンの時代は到来するのか

 欧州王者のバイエルンを中世の騎士に例えるなら、さしずめ、「鉄の鎧を身にまとい、鋼の剣を手にした無敵の存在」といったところだろうか。主力選手は軒並み残留し、指揮官にはバルセロナで一時代を築いたジョゼップ・グアルディオラを迎えた。更に、ドイツサッカー史上最高クラスの天才マリオ・ゲッツェの加入により、戦力は昨シーズン以上に充実している。現時点でこれと言った不安要素はなく、たびたび指摘される「3冠達成に伴うモチベーションの低下」にしても、バルセロナでタイトルを獲得し続けてきたグアルディオラが《模範解答》を示してくれるはずだ。どこから見ても死角はない。「バイエルン時代の到来」を予感させる雰囲気を、彼らは十分に醸し出している。

 もっとも、周囲もただ指をくわえて見ているだけではない。2012年までの2シーズン、バイエルンを抑えてブンデスリーガ連覇を成し遂げたドルトムントは、リーグタイトルの奪還を狙い、新たな戦力の獲得に注力している。昨シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)で得た《臨時収入》を元手に、早速3人の有能な選手を入手した。当初のターゲットだったマンチェスター・シティーのエディン・ジェコやポルトのジャクソン・マルティネスこそ獲得できなかったが、堅実な守備に定評があるギリシャ人DFソクラティス・パパスタトプロスと、リーグ・アン得点ランキング2位のFWピエール・エメリク・オーバメヤンをサンテティエンヌから確保。更にクラブ史上最高額の移籍金2750万ユーロ(約36億円)でシャフタールからヘンリク・ムヒタリアンを呼び寄せた。昨シーズン、国内リーグで29試合の出場で25得点を挙げ、CLでも注目を集めた逸材の獲得は「ゲッツェの穴を埋められるのか」という問い掛けに対する「最高の答え」となった。7月の上旬までに大方の補強を終え、チーム作りに集中できることも大きなメリットと言える。

 ドルトムントは再びバイエルンを脅かす存在になる可能性がある。更に踏み込んで言えば、私はこう考えている。来年の今頃、笑っているのはバイエルンではなくドルトムントではないか、と-。



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