「バルサ流」の土台はできている
改めて指摘するまでもなく、彼ほど徹底して「バルサ流」を貫いた人間はいない。13歳でバルサの下部組織「マシア」に入り、19歳でプロ契約、ヨハン・クライフ監督が指揮した「ドリームチーム」でキャプテンを務めた。現役引退後はリザーブチームを経てトップチームの指揮を執った。そこで生じる当然の疑問は「バルサ流」の方法論がバイエルンでも通用するのか、ということだ。リオネル・メッシ、チャビ、アンドレス・イニエスタが存在しないバイエルンでは、確かにバルサと同じ攻撃スタイルを実現するのは無理だろう。
だが、攻撃面だけを取り上げてあれこれ論じるのは、フットボールを分析する際に最も犯しがちなミスだ。ドルトムントのユルゲン・クロップ監督が指摘するように、バルサには流れるような攻撃だけでなく、失ったボールを5秒で奪い返すプレスという武器がある。そして、その組織的なプレス網を整え、バルサに黄金期を築いたのがグアルディオラだった。
実は昨シーズンのバイエルンの強さを支えていたのも、前方から連動した強度の高いプレスだった。ブンデスリーガでは34試合を戦って失点はわずか18。守備が恐ろしく強化されたことで、フランク・リベリーやアルイェン・ロッベン、トーマス・ミュラーの速攻をより生かせるようになったのだ。そう考えると、グアルディオラが作り上げたバルサとの共通点は決して少なくない。新監督のアイデアを吸収し、実践するための土台はできている。
また、よく指摘されてきた「ドイツ語の習得」という課題も、記者会見を見る限り全く問題ないだろう。会見にはスペイン語の通訳もいたのだが、グアルディオラは全く通訳に頼らず、ほとんどの質問にドイツ語で答えていた。就任したばかりの新指揮官は、早くも選手やファン、そしてドイツのメディアを味方につけることに成功している。
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