「黄金期」の実現へ高まる期待感

 カール・ハインツ・ルンメニゲ社長はグアルディオラについて「革命を期待しているわけではない。大きな変化はないだろう」と語っている。確かに、昨シーズン3冠を達成したチームに大改造はそぐわない。むしろ重要なのは、成功を手にした選手たちに新たな目標とモチベーションを与え、心身ともにリフレッシュさせることかもしれない。

 その点から言っても、グアルディオラには期待が持てる。優れたモチベーターとしての能力こそ、バルサのような常勝クラブで最も必要とされる能力だったはずだからだ。バルサの4シーズンで、彼はリーガ3連覇を含む14ものタイトルを獲得した。これは常にチームを刺激し、選手たちに活力を注入し続けなければ達成できない数字だ。

 更に、グアルディオラは若い選手を大胆に起用し、成長させることができる指揮官でもある。彼の下でマリオ・ゲッツェ、ダヴィド・アラバ、ハビエル・マルティネス、シェルダン・シャキリらがどう成長するのか。特にゲッツェについては気になるところだ。バルサでのメッシと同様に、この小柄なテクニシャンはこの先、何年もバイエルンの主軸となるだろう。その逸材をどう起用するのかで、チームのフットボールそのものが変わってくる。

 この夏の新加入選手は今のところ、ゲッツェとマインツから獲得したDFヤン・キルヒホフだけ。加入が噂されているロベルト・レヴァンドフスキは恐らく、2014年にドルトムントとの契約満了を迎えてから移籍金ゼロでバイエルンに来るだろう。そうなればマリオ・ゴメスの立場が危うくなるが、ゴメスは既に新シーズンのチーム構想上でも微妙な立場になっているため、この夏にも新天地を探すかもしれない。

 というわけで、グアルディオラのバイエルンはまだ始動したばかりではあるが、ポジティブで明るいムードに包まれている。欧州フットボールをリードしてきたバルサの覇権を奪い、新たな「バイエルンの時代」が始まるのではないか。そんな期待感だ。

 この見方にはドイツ人としての期待が多分に含まれていることは認める。だが、もしそれを実現できるとしたら、豊富な勝利の経験と鋭く冷静な頭脳、そして絶大な求心力を持った指揮官だけだろう。そう、ジョゼップ・グアルディオラのような--。



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